第23章 成果
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そんな訳で私達は、総統局のある王都・ミットラスへとやって来ていた。
実を言うと私はウォール・シーナ内に入るのは初めてで、街中を歩く人々の優雅な服装に目を奪われていた。
私の生まれ育ったシガンシナ区は労働者の町だったので、作業着やエプロンなどを着ている人が多く、タキシードやドレスを着た人など見たことがなかった。
だから、きらびやかな格好をした人々が行き交う光景に、まるで舞踏会にでも来たかのような錯覚を覚えるのだった。
「うわぁ…」
街の中はどこを見ても綺麗に整備され、ゴミひとつ落ちていない。さすがは内地だ。
巨人に怯えることもなく、こんなに美しい街に住めるのなら、みんながこぞって内地に行きたがる気持ちも分かる。
シガンシナ区ともトロスト区とも違う光景に、私は思わずキョロキョロと辺りを見回してしまった。
そんな私を見て兵長が少し眉を寄せる。
「おい、ちゃんと前を見て歩け。転ぶぞ」
「は、はいっ!」
注意を受けて私は慌てて前を向いたが、その拍子に足がもつれてしまった。
「わっ!」
だけど、目にも止まらぬ速さで兵長の腕が伸びてきて、転びそうになった私のことをしっかりと抱きとめてくれた。
「オイ…言っているそばから…」
「すっ、すみませんっ!ありがとうございます」
私が兵長に平謝りをしていると、少し前を歩いていたエルヴィン団長が振り返って言った。
「さぁ。到着した」
私たちはいよいよ、ザックレー総統の待つ兵団の本部に到着したのだった。