第23章 成果
「お?ラウラ、やっとこっち側に戻ってきたか。顔つきがいつものラウラだ」
声をかけられて右側を見れば、ケイジさんが笑っていた。
私が絵に夢中になってしまうことを、班の中では「あっち側にいく」と呼んでいて、ケイジさん達からこう言われるのは毎度のことだった。
きっと、「あっち側に行っている」間、色々と迷惑をかけていたに違いないのに、先輩方はそれを怒るでもなくいつもこうして笑いかけてくれる。本当に感謝してもしきれない。
「おめでとうラウラ!」
左側から声がして振り返ると、ニファさんとヒゲゴーグルさんも笑っている。
「討伐数0.5だな!」
「……0.5??」
何だろうその微妙な数字は、とキョトンとする私に、今度はモブリット副長が声をかけてきた。
「何だ、ラウラは覚えていないのか?今日、初めて巨人を討伐しただろう」
えっ、と驚いて私は馬の背中から転がり落ちそうになる。
…いや、でも、思い起こしてみれば、確かにそんな記憶がある。そうだ、私は巨人の首を跳ね飛ばした。
「や、やったぁ…」
今頃になってからブルブルと身体が震え始めた。これは、歓喜での震えだろうか。でも、なんで0.5?と思った時、後ろから声がした。
「クソメガネと同時だったからな」
「兵長っ!」
振り返ればそこには、馬に乗ったリヴァイ兵長達の姿があった。兵長の少し後ろを歩くペトラが、ウインクをしながらヒラヒラと手を振ってくる。
「申し訳ありませんっ」
私は馬から飛び降りて兵長のもとへと駆け寄り、何度も何度も頭を下げた。覚えていないけれど、自分がどれだけ迷惑をかけたのかはよく分かっている。
…これも実は毎度のことで、本当に申し訳ないやら情けないやらで、穴があったら入りたいくらいだ。
繰り返し頭を下げる私を馬上から見下ろしながら、兵長は言った。
「何にしても、よかったじゃねぇか。おめでとう」