第23章 成果
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壁内に到着した時、私はまるで白昼夢から覚めたかのように、一気に現実へと戻ってきた。
絵に夢中になってボーッとしていたものが、正気に戻ったのだ。
いつもこうだ。
巨人との戦闘があった時は、大抵途中で正気を失って絵に没頭した挙句、しばらく上の空になってしまう。
壁外にいる間に正気に戻ることもあれば、今回のように壁内に戻ってきてからやっと正気に戻ることもある。
我ながら、よく毎回死なずに帰ってこられているものだと思う。
だけど、それが誰のおかげかはよく分かっていた。
ハンジ班の先輩方、特別作戦班の皆さん、モブリット副長、そして誰よりもリヴァイ兵長のおかげだ。
彼らが、巨人に夢中になって何がなんだか分からなくなってしまう、どうしようもない私のことを守ってくれているから、私はこうして命を永らえさせて、絵を描くことができている。
だから私は、支えてくれたみんなの恩に報いるためにも、役に立つ絵を描かなければいけない。
願わくば、きちんと正気を保った状態で巨人を観察し、それを描きたいものなのだけど…。