第19章 酒
そんなことをありのまま話すのも…何だか切ない話だった。
「えーと…」
でも、だからと言って二人にウソなんてつける訳もない。
私は目をキョロキョロと泳がせながら、何とか当たり障りのない言葉を探した。
「いや、別に責めている訳じゃないんだよ?そんなに気にしなくていい」
そんな私の様子に、ナナバさんがさりげなく助け舟を出してくれる。
「ただ、ラウラが同期の子たちと一緒にいるところって、あまり見たことないなぁって思ってさ。いつも年上の兵士たちとばかり話しているようだったから」
その言葉に、なるほどそういうことか、と私はピンと来た。
二人は私が同期の中から浮き気味であることに気がついたのだろう。それで、優しいナナバさんとゲルガーさんは心配してくれたのだ。
「はい…正直に言いますと、訓練兵の時からちょっと浮いてしまっていたと言いますか…。決して嫌われているとか苛められているという訳ではないと思うんですが、年も上だし、私は絵ばっかり描いていたので…」
「そうか…」
私の話を真剣な表情で聞いてくれながら、ゲルガーさんとナナバさんは頷いた。
「そんなことないよ!」「勘違いだよ!」と中途半端な否定をすることもなく、私の話をとりあえず全部聞いてくれるその姿勢が、とても心地よかった。
「ま、ほんのちょっとばかし、近寄りがたいのかもしれねぇな。ラウラは普段は小動物みてぇに可愛らしいが、絵を描いている時の顔は怖ぇからな」
がはは、と笑いながら言うゲルガーさんの首の後ろを、間髪入れずにナナバさんが無表情でビシッと叩く。
(あ…私って、絵を描いてる時の顔、怖いんだぁ…。今度から気を付けなきゃ…)
と、思っているのが表情に出ていたらしい。
「ラウラ、気にすることないさ。真剣な表情の時は、誰しも怖い顔になるもんだから。それに私はラウラのそんな表情も好きだよ」