第18章 似顔絵
もうもうと蒸気を上げながら蒸発していく巨人の身体を見ながら、私はその様子ですらスケッチしていた。
どんな場面だろうと、どんなに些細なことだろうと、その全てが貴重な資料になると思っているからだ。
サッサッとスケッチブックに線を引いていく私の手元を、斜め後ろに立つ兵長が見つめているのを感じる。
兵長はよほど私の絵を気に入ってくださったのか、アトリエだろうと実験場だろうと、いつも私の近くにいて絵を見ていた。
最初の頃は、あの鋭い瞳でじいっと見つめられていることに緊張したものだったが、兵長の優しさを知るにつれて、いつの間にか怖さは感じなくなっていった。
「ラウラよ、お前、ハンジ班に入ってからどのくらいになる」
唐突に兵長に問われて、私はふと線を引く手を止めた。
「えっと、…半年近くなるかもしれません」
それを聞いて兵長は、はぁ、と珍しくため息をついた。
「ハンジとの付き合い方はよく考えた方がいい。でないと、お前もいつか死ぬぞ」
淡々と言い放たれた言葉に、私は「はは…」と苦笑いするしかなかった。
確かに、オルオの前例もあるし…大げさではなく可能性として十分考えられることだ。恐ろしいことに。
でも、ハンジ分隊長の班に入ってから、自分でも感じるくらい、私は成長したと思う。
豊富な画材道具でたくさんの絵を描かせてもらったおかげで、絵画制作の技術も上がったし、分かりやすい図解の描き方も学んだ。
ヒゲゴーグルさんたちに訓練をつけてもらって、巨人との戦闘能力だって伸びてきていると思う。まだ討伐数ゼロなのが寂しいところだけど…。
私はあまり身体能力の高い兵士ではないから、頭を使って戦わないとすぐに死んでしまうだろう。自分の特性をよく理解して、無駄なく効果的に戦う術をもっともっと磨いて生き残らなければならない。
…全ては、巨人の絵を描き続けるために。