第17章 巨人捕獲作戦
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巨人の捕獲作戦に協力しろと言われた時、真っ先に俺の頭をよぎったのは、ハンジとラウラの顔だった。
なぜなら、程度の違いこそあれ、あの二人は夢中になると周りが見えなくなってしまうところがあるからだった。
そして、どちらも得がたい能力を持つ、才能あふれる狂人だ。
ハンジは巨人を見れば、自分の身の危険も考えずに突っ込んでいってしまうし、ラウラの方も無謀に巨人に接近することは無いにしても、絵を描き始めるとテコでも動かなくなってしまうところがある。
ましてや、今回の捕獲作戦の囮役はラウラが務めるという。
…あいつにやらせて、本当に大丈夫なのか?巨人が近づいてきたら、スケッチブック開いちまうんじゃねえか…?
作戦決行日まで、俺はずっとそんな事を考えていたのだった。
捕獲作戦の準備で忙しく、ラウラはあまりアトリエにいないし、いても例の異常な集中力を発揮して俺の声なんかまるで聞こえちゃいねぇ。
「絶対に無理はするな。自分のすべきことをよく考えろ」
捕獲作戦開始時にもそう忠告したが、あいつは青い顔をコクコクと上下させるだけで、どれくらい覚えているのか怪しいもんだった。
随分と緊張しているように見えたが、その点についてはあまり心配していなかった。
あいつはいつも出発前には血の気を失ったみたいな顔をしているが、いざ壁外に出てしまえば、面白いほど目に見えて落ち着きを取り戻していく。
そういう奴は珍しい。大抵は壁外の恐怖に押しつぶされて平常心を失うか、小便をチビる奴の方が多い。
案の定、壁外に出て巨人を発見した頃には、あいつの目はどっしりと据わっていて、囮行動も落ち着いてできているように見えた。まぁ、内心生きた心地はしなかっただろうが。
でもまぁ、巨人に食われそうになった時には、援護班で後ろに控えている俺がすぐに削いでやるつもりだったから、何も心配はしなくてよかったんだがな。
ラウラとグンタの落ち着いた囮行動によって無事に巨人の捕獲に成功し、一人の犠牲者を出すこともなく作戦を完了させることができた。
上出来も、上出来だ。出来すぎなくらいだ。