第17章 巨人捕獲作戦
私の方の巨人は6m級と4m級であり、比較的足は遅いように思われる。
ドオッドオッ、と地響きをさせながら後ろを追いかけてくる姿を見て、私は全身から一気に汗が噴き出した。
(怖い)
4m級の巨人の方は、大きな口からヨダレが垂れていて、ギョロギョロと開いている瞳は、じいっと私の方を見つめて視線を外すことはない。
一方の6m級は、内股で女の子のように走りながら追いかけてくる。その視線はどこか別の方を見ていて、私には向いていない。
だけど不思議なことに、ぴったりと私の後を追ってきているから、きっと見ていないようでいて見ているのだろう…。気持ち悪い。
風向きが変わって、向かい風だったものが追い風になった。
馬で走る分には走りやすくなってよかったのだが、むわぁ、と巨人特有の刺激的な臭いが全身を包み込み鼻をついた。
ドキッ、ドキッと心臓が大きく鼓動しているのを感じる。額にかいた汗は、べっとりと脂汗になっていた。
(あと少し…!)
罠を仕掛けているポイントが近づいてきて、待ち構えているモブリット副長やケイジさんの姿が目視できるようになってきた。
とその時、後ろから奇妙な叫び声がした。
「えぇいあぁ」
馬の駆ける速度は落とさずに後ろを振り向けば、4m級の方がまるで弾丸のように頭から飛び込んでくるところだった。
「…っ!!」
私はとっさに馬のたずなを引いて回避行動を取ると、さらに馬の速力を上げた。
私の馬はザールという名前のメス馬で、瞬足が自慢の子だ。訓練兵時代からの付き合いになるので、すっかり以心伝心の仲になっている、と私は思っている。
でも、彼女の方も私のことを好いてくれているようで、餌やりの時などはよく顔を擦り付けてくる。鹿毛の、優しい顔立ちをしている美しい馬だ。
「ラウラ!!よく頑張ってくれた!!後は俺たちに任せろっ」
ケイジさんの声が上から聞こえて、バッと仕掛け網を起動させる合図を取るのが見えた。
私はザールのたずなを引いて方向を変えると、もう一体の6m級がどうなったかを確認した。
そちらの方も無事にポイントにおびき寄せられたようで、その体をワイヤーで作った網が包み込むのが見えた。