第17章 巨人捕獲作戦
全ての兵士が戦闘に参加する訳ではなく、戦う者、援護する者、補給物資を管理する者など…様々な役割を分担しながら戦っていることは十分理解している。
巨人と直接戦闘をすることだけが「戦い」ではないのだ。
だけど、それは分かっているのだけれど…やはりどうしても自分が何もできていないように感じてしまうのだ。
「生きて帰って初めて一人前」と言われている調査兵団において、私はまだ「一人前」になれていないのではないかという思いがぬぐえない。
生きて帰ってきてはいるけれど、果たしてそれは本当に自分の実力で叶ったことなのだろうか…誰かのおかげで生き残れているにすぎないのではないか…といつも思ってしまっていたのだ。
「ラウラには、捕獲した巨人の絵を描いてもらわなくちゃいけない。万が一怪我をしたら今後の研究に支障が出てしまう」
少し困ったような表情をして頬を掻いた分隊長の顔を見た瞬間、私は自分の考えがあまりにも軽率であったことに気がついた。
そうだ…自分の思いも大切だけど…、私にはもっと他にするべき役目が与えられていたじゃないか。
「巨人の絵を描く」。
そんな大切な役割をすでに与えてもらっていたのに…。
思慮不足だったことを痛感してシュンと肩を落とした私は、それ以上何か言えるはずもなかった。
誰に何をやらせるか判断するのは、分隊長が決めることだ。私のちっぽけなプライドなんて、どうでもいいことだ。
眉と肩を下げてうつむいていた私のもとに、分隊長がゆっくりと歩いてきた。
ぽん、と肩に手を置かれて顔をあげると、見下ろしてくる分隊長と目が合った。
「……いいかい?十分な距離を取っておびき寄せるんだ。危険だと感じた時にはすぐに離脱して構わない。死にさえしなければ、何度試したっていいんだから」
「…えっ、それって…」
言われた言葉の意味が、すぐには理解できなかった。
「私に、囮役をやらせていただけるんですか?!」
私が思わず椅子から立ち上がると、ハンジ分隊長はまるで小さな子どもをあやし付けるような笑顔を浮かべて大きく頷いた。
「あぁ、君に任せるよ、ラウラ」
「…っ!ありがとうございますっ!精一杯頑張りますっ!」
私は大きな声を張り上げると、ドキドキと高鳴る心臓を鎮めるため、左胸に手を当てた。