第16章 尊敬
馬を厩舎につないだり、荷物の片付けを済ませてから研究室に行くと、そこにはモブリット副長だけがいて、ハンジ分隊長に指示された資料の用意をしていた。
私に対してもいくつか指示が出ているらしく、副長がその指示書を渡してくれた。
「帰ってきた早々で悪いな。だが、今回の発見はすぐさま上に報告しなければいけない。もう少しだけ頑張ってくれるか」
そう言うモブリット副長の顔にも疲労の色が浮かんでいて、むしろ私よりもずっと疲れているのではないかと思われた。
「了解しました。すぐ作業に入ります」
指示書を受け取った私は、そのまま隣室のアトリエへと向かおうとしたが、ふと足を止めて振り返った。
「ん?どうした?」
モブリット副長は、どんなに些細なことでもすぐに気がついてくれる。この気の利き具合が、ハンジ分隊長を支えるのには必要不可欠なんだろう。
「あの…モブリット副長は、巨人の捕獲についてどうお考えなんですか?」
「私の考え?」
唐突な私の問いに副長はコトリと首を傾けたが、拒否するようなことはしない。
「その…実行可能なのでしょうか?」
「うーん…。その時の状況によっては、必ずしも可能ではないと思う。だが、条件さえしっかりと確保することができれば、一人の犠牲を出すこともなく捕獲が可能だと思う。
少なくとも、分隊長と私はそう考えているよ」