第2章 奪われたもの
大通りに出ると、そこは阿鼻叫喚のちまたと化していた。
道のあちらこちらに岩が転がっており、その下からは、押しつぶされた人の四肢がはみ出していた。
地面に染み出した血は、土と混ざり合って赤黒く変色している。
「巨人だあああぁぁぁ!!」
「壁に穴を開けられたぞっ!!」
走り抜けてゆく人々は、みな蒼白な顔をして口々に叫んでいた。
「…っ!!」
私たち三人も走り出した。
私は、いつ、どのタイミングで前を向いたのか全く分からなかったけれど、前を向いて走っていた。
両隣を走る父と兄は、両目からとめどなく涙を流していた。
「巨人が入ってきたあああぁぁ!!」
後ろの方から聞こえた叫び声に思わず足を止めて振り返ると、わずか数十メートル先に、異様に巨大な生物が立っているのが見えた。
「あああぁぁ!!」
耳をつんざくような絶叫が別の方角から聞こえて、声のした方に顔を向けると、後ろにいる奴よりもさらに大きな奴が、まるで子猫を掴みあげるようにして男性を握り締めて、バリッとその頭を食いちぎるところだった。
「きゃあああぁぁ!!」
私は悲鳴を上げた。
そして父と兄の手を握って無我夢中で走り始めた。
あれは……あれが巨人…!!あんなに大きくて…醜くて…恐ろしい…!!人を…人を食べた!!あんなふうにして、人を殺したっ!!
私たちと同じように逃げまどう人で、街道は蜂の巣をつついたような大混乱だった。
何度も人にぶつかり、ぶつかられ、それでも父と兄の手だけは絶対に離さなかった。父と兄も思いは同じで、手が痛くなるくらいお互いに強く握り締めあった。