第15章 見えている世界
そんな訳で私と兵長は、ライデンのおじさんの家へと続く細い路地に来ていた。
この道は、ライデンと歩いた道だ。ほんの一ヶ月ほど前のことだというのに、すごく遠い日のことのように感じる。
あの日、隣を歩いていたのはライデンだったのに、今は隣に兵長がいる。私の世界は…日々刻々と変わっていくんだ…。
何の連絡もせずに突然訪ねてしまったことを心配していたが、おじさん夫婦は快く私たちを迎え入れてくれた。
以前お邪魔した時に過ごした、中庭の見えるリビングに通されると、挨拶もそこそこに、さっそく私は持ってきた絵を差し出した。
「あの…お二人に差し上げようと思って、描いてきたんです。もしよろしければ貰っていただけませんか…?」
自分の絵を人に見せる瞬間というのは、いつも緊張する。絵を差し出す指先が、少し震えていた。
差し出された絵を見ておじさんとおばさんは一瞬目を丸くした後、顔いっぱいに笑顔を浮かべてくれた。
「まぁまぁ!何て素晴らしい絵なんでしょう!」
「これを君が描いたのかね?いやぁ、素晴らしい!こんなに上手な絵は初めて見たよ」
二人はまるで子どものように目を輝かせて絵を見つめていたが、しばらくすると、その瞳からはポロポロと涙がこぼれ落ちていった。
「ありがとう、ラウラさん。まるで3人が目の前にいるようだよ。この絵は大切にさせてもらうよ」
おじさんの言葉に、私はコクコクと頷くことしかできなかった。
泣いている二人の姿を見ている内にいつの間にか私の頬にも涙が伝っていて、今声を出したら、みっともなく泣きじゃくってしまいそうだったから、必死で我慢した。
私にできることなんて、これくらいのことしかない。だけど、やってよかった。二人の笑顔を見て、本当にそう思う。
兵長はずっと、私の隣にいてくれた。
何か特別なことを話す訳ではないけれど、ただ隣にいてくださるだけで安心できる。兵長がついて来てくださらなかったら、きっと私はまだ迷って動けないでいただろう。