第14章 プレゼント
夕暮れも近くなってから、私たちは兵舎へと帰ってきた。
オルオとはそこで別れて、私は少し迷った後、このままリヴァイ兵長のもとへと行ってみることにした。
兵長はご自分の執務室にいらっしゃるだろうか?それとも、出かけていらっしゃる?
そう言えば私は、リヴァイ兵長のもとへと訪ねて行ったことが今までに一度も無かったことに気がついた。
中庭や待合室で絵を描いていた時も、アトリエを与えられてからも、いつも訪ねてきてくれるのは兵長の方からだった。
(一応、執務室の場所は知っているけれど…)
私は、新米兵士として当然に知っているべき情報を思い出し、リヴァイ兵長の執務室へと向かって歩いて行った。
兵長の部屋の前に立ち、ゴクリと唾を飲み込む。
ノックをしようとして持ち上げた右手が、緊張で少し震えている。
左手に持ったクラバットの箱が、手汗で汚れないようにしなければ…。
コンコンコン、とノックをすると、ややあってから「入れ」という声が聞こえた。
良かった、お部屋にいらっしゃったようだ。
「失礼します」
扉を開けて中に入ると、兵長は机について書類作業をしていた。
あまり事務処理をしているイメージが無かったので、少し意外に感じる。
「お前か。今日は非番なのに、何か俺に用があるのか?」
私が兵服を着ていないのをチラリと見て、兵長が言う。
「はい。…あの兵長、よろしければこれ、使ってください」
そう言って、クラバットの入った箱を差し出すと、兵長は一瞬キョトンとした顔をした後、怪訝そうに眉を寄せた。
「…何だ?」