第14章 プレゼント
「おい…ラウラ、どうすんだ…?お前、こんな金持ってんのか?」
「う…うん、一応は持ってるけど。でも、これを買ったら、スッカラカンになっちゃうな…」
「……」
私たちはしばし無言で立ち尽くしていたが、そんな風に突っ立っていても財布の中にお金が湧いてくる訳じゃない。
私は覚悟を決めた。
「…っ!私は…会計に行く……っ!!」
「お、おい、お前、無理しない方が…」
「いや、でもせっかくここまで来たのに、買わないで帰るなんて、意味がなくなっちゃうよ。
それに、これだけの金額を出してもいいと思うほど…ううん、金額なんかで示すことなんてできないけど…、兵長にはすごく感謝してるんだ!だから、私は買う!!」
そう言い放って、私は自分自身の決意を固めると、店主が待ち受ける会計台へと歩いて行ったのだった。
紳士服店から出た私たちは、ブラブラと街の中を散策しながら、オルオに似合うシャツを探して回った。
途中でお腹が空いて休憩をした時、オルオが食事をおごってくれた。
私の財布にはもう何も入っていないことを知っていたのと、兵長のために大金をはたいた私の心意気に関心したためらしい。
「ところでよぉ、兵長に感謝の気持ちを伝えたいって、なんか特別なことでもあったんか?
いやもちろん、何も特別なことが無くたって、兵長にはいつもお世話になってるんだからそういう気持ちになっても不思議じゃねぇんだけどよ」
もぐもぐと食事を口に運びながらオルオが言う。
ほうれい線が伸び縮みするところが…、本人には絶対言わないけど、ちょっと可愛い。
「うん、実はさ」
私は、ライデンのおばさんを失って泣いていたところを兵長に励まされたこと、その時にクラバットで顔を拭いてもらったことをオルオに話した。
「そうだったんか…ライデンのお袋さんも…」
オルオはライデンの同期であったので、その母親が亡くなったと聞いて、胸を痛めたらしい。シュンと眉を下げて、悲しそうな顔をした。
オルオは、まだ少し子どもみたいで理屈っぽいところもあるけれど、とても良い男だ。
見た目はちょっと老けてるけど、優しくて頼りになる兵士だと思う。