第14章 プレゼント
トロスト区は、大きな商会が取り仕切っているおかげで、とても商売が繁盛している街だ。
シガンシナ区の実家の近くにも露店はたくさんあったし、店が立ち並ぶ商店街もあったけれど、こちらと比べたらその規模は比較にならない。
もちろん、あちらの方が「小さい」という意味だ。
クラバットがどんな店で売っているのかなど全く知らなかった私だったが、なぜかハンジ分隊長から情報が流れてきてリヴァイ兵長の行きつけの服屋を知ったので、これ幸いと思って行ってみることにしたのだ。
「おいラウラ、ここなのか?」
「うん、店名も合ってるし…ここで間違いない!さぁ、突撃しようオルオ!」
「おうさ!」
私たちはちょっと不自然なくらい勇んで、店の扉を開けた。
そこはこじんまりとした小さな店で、全体的に落ち着いた色合いのシックな紳士服を取り扱っていた。
何だか、どの服もリヴァイ兵長に似合いそうだ。
「えっと…クラバットは…」
そう言って私は、キョロキョロと店内を見渡す。小さな店ではあるが、商品はたくさん置いてあるのでそんなにすぐには見つけられない。
店内には他にも数名のお客さんが買い物をしていて、店主と思われる男性は、会計の接客中だった。
…自分で探すしかない。
と、そこで、いつの間にか私の傍を離れていたオルオが、「おあーっ」と声を上げるのが聞こえた。
「ラウラ!あったぞ!多分これだ、兵長がいつも着けていらっしゃるのは!」
「おあーっ!間違いない!」
駆け寄っていった私は、オルオが手に取っている布を見て、先ほど彼が上げたのと同じような歓声を上げた。
オルオの手元には、真っ白いマフラーのような布がサラリと乗っていて、とても上等そうな質感だった。
チラリと値札を見た私は、瞬時にクラバットと同じような顔色になった。
それを傍らで見ていたオルオが、「どうした?」と言って値札を覗き込んできて、そしてやはり私同様に顔面蒼白になった。
「高っか…」
私たちは、ヘナヘナと全身の力が抜けていくような気持ちになった。
やはり兵士長ともなると、収入はとても高いのだろう。
身に付ける衣服一つとってみても、私のような新兵とは全然違う。