第14章 プレゼント
「では、失礼します」
敬礼をすると、私はコールマン班長と別れて歩き始めた。
おばさんまでも失って以来、私の胸の内にはずっとそんな思いがあったのだった。
〇
アトリエを与えられて以来、調整日には大抵アトリエにこもって絵を描くのが私の習慣になった。
エルヴィン団長が約束してくれた通り、必要な画材道具の一切は兵団資金から購入してもらえるようになり、おかげで私はここ数年間の不足を取り戻すかのように、思いきり絵を描くことができるようになった。
以前は「もったいないから」とあまり使えなかった油絵の具も、惜しげもなく使うことができている。もちろん必要な分だけだ。無駄遣いなどは決してしない。
巨人研究班で使用する挿絵や、ハンジさんから依頼のあった絵を描くというのが、私に求められている仕事だった。
普段は新兵としての任務もたくさんあるので、あまり長時間アトリエにいることはできないが、だからこそ調整日には大抵、朝から晩までこもりっきりでいる。
絵を描くって、最高に楽しい。
そんな風にして調整日を過ごしていた私だったが、今日の休みだけは、普段とは違う過ごし方をしてみようと思っていた。
街へ買い物に出かけるのだ。
実は少し前から気になっていたものがあり、ある情報が手に入ったので、ついにそれを買うことにしたのだ。
私の気になっていたもの、それは兵長に贈るクラバットだった。
以前、真夜中に中庭で泣いているところを励ましてもらったことがあったのだが、その際に兵長は、何の躊躇もなく首に巻いていたクラバットを引き抜いて、私の涙や鼻水を拭ってくれた。
おかげで、シミひとつなく綺麗に洗われた真っ白いクラバットは、私から流れ出た液体でグジュグジュに汚れてしまった。
すぐに弁償を申し出たけれど、兵長にあっさりと断られてしまい、以来、私はそのことをずっと気にしていたのだ。