第14章 プレゼント
班長の話を聞きながら、ライデンの事を思って私はぼんやりとしてしまった。
きっとライデンは…私のことを守ろうとしてくれたに違いない。
「お前の事を守る」と、何度も何度も彼は言ってくれた。きっと最後まで、その言葉を貫いてくれたんだ。
ありがとう…ライデン。おかげで私は、壁内に戻って絵を描くことができたよ。でも…あなたにも見てほしかったんだ…。
黙ったままの私に、班長はいたたまれなくなったのか、申し訳なさそうな顔をして言った。
「……呼び止めてすまなかったな。それだけ、君に言いたかったんだ。さぁ、もう行ってもいいぞ」
その声に、ハッと意識を引き戻された私は、班長に向かって勢いよく頭を下げた。
「教えてくださってありがとうございました。彼が最後まで勇敢に戦ったと聞いて、私は幼馴染として本当に誇らしく思います」
「そうか…」
班長は眉を下げて、嬉しいような悲しいような、複雑な表情をして頷いた。
きっと班長は、ライデンの死に責任を感じているんだろう。でもそれはライデンに対してだけじゃないはずだ。
班長は、多くの班員に戦闘の指示を下す。その結果、兵が死ぬことだってあるだろう。
自分の指示で死なせたという罪悪感と、生き残った自分の責任を背負いながら、戦い続けていかなければならない。
…兵士というのは本当に、なんて辛い仕事なんだろう。
私は巨人の絵を描くために調査兵団に入った。
そして、巨人研究班にも所属することができて、ありがたいことに、自分の描いた絵が少しは兵団の役に立っている。
もっともっと、たくさん巨人の絵を描いて人の役に立ちたい。でもそのためには、危険を冒さなければいけないこともあるだろう。いつだって命懸けだ。
兵団に入ってからできた仲間はたくさんいるけれど、もう私には家族と呼べる人はいない。家族も同然だったライデンとおばさんは、…もういない。
絵を描くためには生き残らなければ意味がないけれど、絵を描くためだったら私はいくらだってこの命を差し出す。
例え私が死んだとしても、誰かがその絵を拾ってくれさえすればいい。
残していく人がいないのだから、いっそ心置きなく命を懸けることができるというものだ。
絵を描くために死ねるのなら、まさに本望だ。