第13章 巨人研究班
「お前の絵はすごい。芸術なんて何も分からねぇ俺だが、お前の絵だけは、絶対にすごいと感じる。だからお前は兄貴との約束通り、山ほど巨人の絵を描け。
もしそれを巨人が邪魔するのなら、俺が削いでやる」
兵長は、ライデンのお母さんの肖像画のページまで見てから、パタンとスケッチブックを閉じた。
「この才能をむざむざ巨人に食わせる訳にはいかないからな」
差し出されたスケッチブックを受け取って兵長の顔を見返すと、兵長はすでに、持ってきた本を読み始めていた。
何となく、もう話さないんだろうな、と思って私も描きかけの絵の方に身体を向けた。
『俺が削いでやる』
そう言った兵長の言葉が何度も胸の中で心強く響いて、私は嬉しくなってキャンバスに勢いよく筆を入れたのだった。
〇
アトリエとなる部屋は小さかったけれど、思っていた以上に多くの荷物が詰め込まれていて、汚れも酷かったので私や兵長、召集された先輩兵士たちはくるくると忙しく立ち働いた。
ちなみに招集されたのは、つい先日結成されたばかりの「特別作戦班(通称・リヴァイ班)」の面々だった。
私は、掃除をする手は休めずに、こっそりとペトラに話しかけた。
医務室に運んでもらって以来、ちょこちょこと話すようになっており、今ではすっかり打ち解けている。
やはり同い年というのは、ただそれだけで垣根を超えられるものなのである。
「ありがとうペトラ、掃除手伝ってくれて」
「ううん、気にしないで!これも業務の一つなんだから。それに、リヴァイ兵長から指示されたことなら、私は何だってするよ」
そう言ってニコニコと笑うペトラは、心なしか前よりも可愛く見えた。いや、もともとすごく可愛いから、いつも通り…かな?