第13章 巨人研究班
それからというもの私が絵を描いている時は、大体リヴァイ兵長が見に来た。
中庭に来ることもあったし、待合室に来ることもあった。昼と夜のどちらかだけの時もあれば、どちらにも来ることもあった。
だけど、昼も夜も見に来ないということだけは無かった。
そんな兵長に恐縮しつつも、よっぽど絵に興味を持ってくれたのだろうと思って、私は嬉しかった。
自分の好きなものに興味を持ってもらえるというのは、とても楽しいことだ。
小さい頃、ライデンがよく私の絵を見てくれていたのも、本当に嬉しかったのだ。
その日は、中庭の方に兵長はやって来た。
大体いつも持参された本を読んでいて、その合間にチラリと私の絵を見てくれる。
今日もいつものように本を持ってこられていたが、すぐには読まずに、私がベンチの上に置いていたスケッチブックを手に取ってゆっくりとめくっていた。
それは、特別な方のスケッチブックだった。
「お前は、なぜ巨人の絵を描く?」
兵長はスケッチブックをめくりながら尋ねてきた。
ちょうど今開いているページには、兄さんと一緒に練習で描いていた花の絵があった。今と比べると、まだまだ表現方法が稚拙だった頃のものだ。
思えばその絵を描いてから5年近く経っているかもしれない。
訓練兵時代は、「ただ楽しくて仕方なくて描いていた子ども時代」とは全く違う気持ちで絵を描いていた。
父さんや兄さんの絵を思い出したり、家から持ち出せたスケッチブックに残っている父さんのアドバイスを何度も見直して、少しでも技量を上げられるように必死で描いていた。
兄さんとの約束を果たすために。
その気持ちはとても大切なものだと思う。だけど…そう言えば私は、いつの間にか花とか風景とか…美しいと思ったものの絵をあまり描かなくなっていたかもしれない。
私が描くのはいつも、気味の悪い巨人の絵ばかりだった。