第12章 変わり者
「ほらラウラ、君から渡すといい」
そう言って、ハンジ分隊長は小脇に抱えていた2枚の絵を差し出してきた。
それを受け取って、私はまるで流れ作業のようにして、エルヴィン団長の前に絵を差し出した。
緊張で手が震える…。
「おぉ…!」
エルヴィン団長は大きな手で絵を受け取ると、晴れ渡った秋空のような瞳を輝かせて、食い入るようにして絵を見つめた。
そして、ハンジ分隊長ほどではないにしても、興奮した表情をして口を開いた。
「素晴らしい才能だ、ラウラ。君のこの能力を、どうか兵団のために使ってくれないだろうか」
絵をハンジ分隊長に渡してから、エルヴィン団長は握手を求めて手を差し出してきてくれた。
「必要な道具の一切は兵団で用意しよう。君にはこれから、巨人の絵を描いてもらいたい」
唐突に言われた内容に、私は心も頭もついて行かず、ただ目を白黒させた。
差し出されたエルヴィン団長の手を握り返すことすら、そのやり方を忘れてしまったように、頭の中がごちゃごちゃだ。
「期待していたとおり、いや、期待以上の才能だ。君のこの才能は、必ずや人類の進撃の一助になる」
止まることなく次々と放たれる称賛の言葉。
…これは夢なのだろうか?あまりにも皆、褒めすぎではないのか?
もしかして本当は…、私はまだ医務室のベッドの上で昏睡していて、これはその夢なのではないか?
だって、兵団幹部の方々にここまですぐに認めてもらえるなんて…出来過ぎだ。