第12章 変わり者
だけどそれ以上考える前に、いつの間にか私たちは団長室の前に到着していた。
コンコン、ガチャ!と、返事が返ってくるより前にハンジ分隊長は勢いよく扉を開けた。
「エルヴィンはいるか?!いるな!!」
私の腕を掴んだままズカズカと部屋の中に入っていく。
その後ろから、「団長申し訳ありません…」と、本当に申し訳なさそうな顔をしてモブリットさんが続く。
彼とは出会って数十分しか経っていないが、彼がいつもハンジ分隊長に振り回されている苦労人なのだということは、十分すぎるほど理解できた。
「何事だ、ハンジ」
窓を背にして、大きな事務机についていたエルヴィン団長が、少し驚いたような顔をして眉を上げた。
その机の前には、とても大柄な男性兵士が立っていて、長めの前髪と口元にたっぷりと蓄えられた口ひげが、どことなく大型の草食動物を思わせた。
(あ、この方はミケ分隊長!リヴァイ兵長に次ぐ、兵団の実力者だ!)
新兵は得てして、強い先輩兵士に憧れる。
リヴァイ兵士長やミケ分隊長などは、一般市民の間でもその名が轟いている精鋭中の精鋭である。
憧れを胸いっぱいに抱えた新兵たちが知らないはずがなかった。
そしてその例に漏れずに、私もミーハーぶりを発揮して知っていた。
「前に話していた巨人の絵の件についてだ!ついに絵が完成したから、見せようと思って走って来た!」
「ほう」
エルヴィン団長は、もともと大きな瞳をさらに見開いて、椅子から立ち上がるとこちらに向かって歩いてきた。
目の前に立ったエルヴィン団長は、すごく背が高くて、鍛え上げられた屈強な体格に、聡明そうな端正な顔立ちをしていた。