第2章 ニンギョ×ノ×ヒトミ
と大きな音を立てて椅子ごとひっくり返る。その反動で飛んでしまった擂鉢を華麗にキャッチしたのはファーの付いた黒いロングコートを着たオールバックの男。
「そんなに驚く事でも無いだろう」
『いやいやいや、ちゃんと声かけてよ』
一同「声かけた(よ/から)」
派手にひっくり返ってもフードはズレないので果たして本当に驚いているのかは不明である。
※※※
『で、何だっけ?鑑定?』
手で叩いてツナギの埃を払うとクロロから擂鉢を受け取ってカウンターの端に置く。
「先日の盗品、人魚の彫刻だ」
『このクリアケース…』
「そう。何か特別な念能力でガードされてるのよ」
『ふむ…』
小さく唸ると硝子棚からアンティーク調のデザインの銀のナイフを取り出す。
-すぅ-
一同「!!」
静かで…でも鋭いオーラをナイフに込める。
(実際どんな能力の使い手か知らないが…)
(洗練されてて美しいとも言える)
(強化系…かな?)
「………」
-バチッ-
『!』
-パリン…-
『うーん…アタシの自慢のナイフが壊れちゃった。一体どうなってんの?このケース…』
ちょん、とチェリーがケースに触れた瞬間だった。パキパキと亀裂が入り、粉々に割れていく。
『え、あれ?』
「もしかすると能力使わないからこそ壊れたのかも知れないね」
「無い可能性では無いけど…」
「ちょと不自然ね」
『触ってみてもいい?』
「あぁ」
-つん-
まるで人形の様な指が優しく宝石の部分に触れる。
-パキパキ…-
『!』
優しく触れた筈なのに宝石にはヒビが入り…そしてその破片はまるで何かにコントロールされてるみたいにチェリーの顔をめがけて飛散る。
-シュパパパパ-
「チェリー!」
-ぱさっ-
『大丈夫』
一同「!」
ガードした右腕には沢山の破片が刺さり鮮血が滴る。引き裂かれたフードとヴェールが床に落ちて絹糸の様な藤色の髪の毛と情熱的な宝石の様な深紅の瞳、艶かしい唇、隠されていた素顔が露わになった。
「チェリー、怪我を…」
『平気だよ、パク。傷は浅いから』
-どろっ…-
-ぼた-
「これは…」
「眼球?本物だったんだ」