第2章 ニンギョ×ノ×ヒトミ
ぱたん、と静かに閉められた扉を呆然と眺めて、ふと我に帰る。
『いーっだ!大きなお世話ですぅ!』
-しん…-
『柄にも無い言動しちゃってさ、変なの』
※※※
誰も寄り付かない薄気味悪い廃ホテル。瓦礫の山は今にも崩れそうな程高く積み上がってるのに崩れない不思議。
「ふぁーあ…やっと帰ってこれたぜ」
「今回は移動がしんどかったな」
わらわらと帰ってきた仲間達の騒々しさに本を閉じて顔を上げる。
「遅かたね」
「フェイが豪速球で帰るからだろ?で、刀は?」
「作り直し言われたよ」
「まぁアレだけ派手に折れればなぁ…」
刀が折れたのは襲撃したその日の夜中。念で作られた見えない壁を壊す際に刀を使用したのだが、思いのほか強固で刀が逝ってしまわれた訳だ。
「絵画班は…え、本当に人魚の絵画しか盗ってないの!?」
「当たり前だろ。シズクそっちなのにそんな大量に盗れねぇよ」
「シズク、人魚像出してくれ」
「おっけー、デメちゃん」
-ぼふん-
と音を立てて掃除機から吐き出されたのは高さ20cm程の小さな人魚の彫刻。まるで水面を跳ねてるように海老反りの彫刻の中心には直径3cmくらいの宝石。
「何でクリアケースに入ってるの?」
「このクリアケース、壊れないんだ」
「ウヴォーの怪力でも駄目。フランクリンの怒涛の攻撃でも壊れなかった」
「今からチェリーのところに持って行って鑑定してもらう」
くるりと踵を返したクロロの後ろを3人が追う。
「俺も行く」
「私も」
「ワタシ預けた刀の進行具合知りたいね」
※※※
-ゴリゴリ-
擂鉢で薄い硝子みたいなものも粉々にして細く擂る。
『我がモノながら硬い…』
はぁと小さく溜息を吐いて力一杯擂る。
「チェリー」
『あー、ちょっと待って今立て込んでる』
「鑑定をお願いしたいのだけれど…」
『だからちょっと待ってってば。これ粉状にしないと…』
「何をそんなに必死に擂ってるの?」
『何って見たら分からない?アタシのうろ………え?』
そこで気付く。自分は今、一体誰と会話をしているのだろうと。
一同「うろ?」
『きゃああぁ!?』
-ガッシャーン-