第2章 ニンギョ×ノ×ヒトミ
『や…嘘………』
「チェリー?」
『やだ…やめて…』
肩を小刻みに震わせ口元を手で覆う。その湿った瞳は今にも滴が零れそうだった。
「しかりするよ」
『マーミィ姉の………眼………』
「チェリー!私を見なさい!」
『!』
「貴女は一人じゃないわ。私が…私達が居る。落ち着いて今日は休みなさい」
※※※
「………っ」
つぅ…と潰れた左目から血が流れる。
「ほぅ…漸く獲物が引っかかったか」
端正な顔立ちをした若い男がその血を拭う。
「で、どうなんだ?知り合いか?」
「………さぁ、どうでしょうね」
潰れてない右目が目の前の男を睨む。深緑のその瞳はエメラルドの宝石の様に美しく、とても冷たい。
両腕を鎖で縛り上げられ衣類は何も纏ってない上半身は生々しい傷が絶えず腰から下は大きな水槽に入れられている。その下半身は人間では無く…鮮やかな色をした尾鰭。だがその尾鰭は綺麗とは言えず、ところどころの鱗は剥がれ傷だらけだった。
「まぁいいさ。解除した奴がお前と同じなのは変わりない」
「………っ」
「至急現場へ向かって捕獲しろ。絶対逃がすな。女帝の可能性も多少はある筈だ」
「!」
「おやぁ?もしかしてビンゴかなぁ?」
室内の薄暗い灯りがそのニヒルな笑みをさらに不気味にうつす。
「本当に君は良く働いてくれるよ、マーミィ」
「………っく…」
声にならない叫びとともに流れるのは一滴の涙。
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