第10章 ニンギョ×ノ×ユクエ
そしてその鯨を中心に結界の様に周りを覆う氷。氷の外側では敵であるマリブとその部下達が攻撃してきている。
『心配しないでいいよ。姉君の能力だから壊されない』
-ザパァ-
『ちょっと!呑気に話してないで手伝ってよ!私達の力じゃ二人ずつしか助けられないんだけど』
『いや、ウチはガキンチョのアンタ達に出来ない血液担当だから。それに…ほら、姉君がもう皆助けた』
コルトピとシズクを陸に上げた人魚は色素の薄い金髪にアメジストの瞳。マチとパクノダを陸に上げた人魚は空色の髪の毛にシトリンの瞳。大きさや言動からして二人共まだ子供の人魚だろう。
※※※
『『『姉(君/様/上)がお世話になりました』』』
と礼儀正しく深々と頭を下げる人魚達。そしてその後に続いて困った様に微笑みながら深々と頭を下げる藤色の髪とルビーの瞳を持つ美しい人魚。
『皆、本当に有難う。沢山傷付けて………御免なさい』
「お…おう…も、戻ったからいーじゃねぇか!な!?」
「そ、そうだぜ!終わり良ければ全て良しってな!?」
「何緊張してんだか」
「切込戦闘班が聞いて呆れるね」
「「うっせ!」」
「って言うかまだ終わってないけどね」
『大丈夫、すぐ終わる』
一同「!?」
氷の防壁の外で未だに攻撃を仕掛けてくるマリブ達一向に向かって手を掲げると防壁から沢山の棘が飛び出し傷を負わせる。
『今度はアタシが皆を守る』
そう言うと海に飛び込んで氷の防壁をすり抜けて外に出る。
「チェリー!」
『大丈夫だよ、お姉さん』
「!」
『水辺は私達人魚のテリトリー』
『姉君に…ウチ等の女帝には誰も勝てないよ』
※※※
「美しい…実に美しい…!今まで見てきた人魚とレベルが違う」
高らかに笑うマリブから目を伏せる。
「でも何故戻った?愛されなければ戻らないのだろう?」
『さあ…何故かしらね。彼等を助けたい…そう思っただけなんだけど…まぁ結果オーライかな?彼等を守れるし…貴方を消せる』
「消す?僕を?何故だい?僕の妻になってくれよ…そしたら僕は海を統べる皇帝となる!」
くるくると自分の毛先を指で弄びながら視線だけマリブに向ける。その目は背筋が凍る程冷たい。
『ふふ…ふふふ』
一同「?」