第9章 ニンギョ×ノ×オモイ
"後の事は君達に任せるよ"とチェスの駒を進める。その背後に跪いて控えるのは秘書を含めた十数名の男女。
「すぐ追って来られたら面倒だから封印の能力者を五名ほど派遣させて」
「かしこまりました」
「って言っても彼等それなりの強者だから足止めなんて数秒も出来るか分からないけど」
そう言ってクイーンの駒を取り上げると愛おしそうに口付ける。
「待っててね、ハニー」
※※※
「はい、出来た」
『マチ有難う!』
大浴場のお風呂から上がって皆が話し合いをしてた最上階の広間に戻ったチェリーはマチにサラサラふわふわ艶々にブローされた髪の毛を嬉しそうに撫でる。話し合いをしていたら何だかんだで遅くなり、時刻は1時を回ろうとしていた。
「チェリー、寝る前に果物食って行けよ。お前の好きなリンゴあるぜ」
『リンゴ食べる!』
「ちょっと!寝る前に食べさせないでよ」
「細けぇ事は気にするなって」
お花や兎など綺麗に飾り切りされた林檎を頬張りながら、ふと窓から見える夜空を見上げて兎に飾り切りされた林檎を掲げる。
「何してるの?」
『今日のお月様まんまる!うさぎさんがお餅ついてる!』
「そうか。チェリーにはそんな風に見えるのか」
『うん!』
「素敵ね」
少し前から落ち込んでる様な雰囲気だったが今日は比較的元気そう。そんな様子を見て安心したのも束の間。
-ずずず…-
『!』
一同「!?」
まるでこの場にいる皆を囲む様に嫌な気配が立ち込め、金縛りの様に旅団の動きが封じられる。
『…みんな?』
「しまった!敵襲か!?」
「チェリーこち来るよ。離れたら駄目ね」
『うん、分かっ…ん!?』
一同「!?」
まるで空間を割く様に黒い影が現れ、伸びてきた青白い腕はチェリーの口を封じ身体を掴む。
※※※
「やぁ諸君、御機嫌麗しゅう」
ぬっ、と黒い影から上半身だけ出してきたのはマリブ本人。捕まえたチェリーを自分の方に引き寄せると背後から肩口に顔を埋める。
「甘い香り…人魚の香り」
『ーっ!』
「少し静かにしていてくれるかい?」
そう言うと身体を掴んでた腕を一度離すと素早くハンカチをチェリーの口元に当てる。