第9章 ニンギョ×ノ×オモイ
「リゾート地だからごちゃごちゃしてるけど島自体は小さいし…何よりチェリーが買物に乗り気じゃなくて」
「そうなの?」
「えぇ…多分暑いのは苦手なんじゃないかしら?外に出るのを嫌がってたからカフェでシズクと待たせて私とマチで回ってきたわ」
「こっちも聞き込みして来たぜ」
とパラソルの影に集まってきたのはフィンクス、ノブナガ、ウヴォーギン、ヒソカ。
「あら?ナンパは失敗したのかしら?」
「ナンパじゃねぇ!!聞き込みだっつってんだろ!?」
「盛り上がってたのに?」
「盛り上がってねぇ!」
「あらそう」
興味無さそうに相槌を打つとくるりと背を向けて"チェリーをホテルに連れて帰るわ"とその場から立ち去る。
「俺達もホテルに戻って作戦を練ろう。この島一帯が敵の陣地と考えられる」
※※※
南国アーカラ諸島。都市部の島は法定速度を守りながら車で走って約一日で一周出来るくらいの小さな島。周りにある島々は生活を発展させるには無理な大きさの極小の島。
人口は500人にも満たないがリゾート地なので人はとても多い。そしてこの地に住む人間は皆、マリブが経営する会社の従業員。
「つまりはこの地に足を踏み入れた瞬間から袋のネズミな訳か」
「じゃあもうそのマリブって奴は知ってるって事だな」
「恐らく。でも今日一日何も仕掛けてこなかったって事は向こうから仕掛けるつもりは無いとも考えられる」
「罠かも知れないがな」
あれだけ欲していたチェリーが既に自分の手の届く範囲に居ると言うのに何もして来ないのは、やはり不自然だと皆は考える。
「一応襲撃は明朝だけど…常に警戒はしとこう」
「チェリーの護衛を担当するのは団長、コルトピ、ボノレノフ、私よ。他の皆は襲撃班」
※※※
「へぇ…あっこのホテルか…盗賊のくせに良いホテルに宿泊とは滑稽だな」
くくく、と喉の奥で嘲笑う。
「今日は様子見…多分夜中か明方に奇襲かけて来そうだよね」
「対策は万全です」
「そりゃそうさ。この島は君のテリトリーだもんね」
「はい」
深々と頭を下げる女性秘書は全身を真っ黒いスーツに身を包む。
「んじゃあご挨拶に行こうかな」
「ご出陣ですね」
「僕はただ彼女を迎えに行くだけさ」