第7章 ニンギョ×ト×トウゾク
「あ、そうだ!」
一同「?」
張り詰めた空気をシズクの柔らかい声が溶かす。
「福引でこんなの当たったんだけど明日チェリーさんの護衛の人、連れてってあげたらどうかな?こーゆーの子供は好きでしょ?」
とその手に持つのは大人二名が入園無料になる水族館のチケット。
「今のチェリーさん2~3歳くらいの見た目と背だし、そのくらいの歳だと入園料かからないでしょ?」
そして誰が連れてくかの話し合いが空が白み出すまで続くのであった。
※※※
「へぇ…天空闘技場か」
カランと音を立ててグラスの中の氷を弄ぶ。
「どうしますか?」
「いや、どうもしない。書類だけ見せてくれる?」
「はい」
受け取った書類をパラパラと捲りながら目を通していく。試合の成績、そしてプロフィール。
「チェリー…ファミリーネームは無しか………年齢は三歳、ね」
「女帝でしょうか?」
「うん、97%ね。見た目の一致…そして最近漁られてるんだよねぇ」
言葉は柔らかいが癪に障ってるのか握力だけでグラスを割ると破片が刺さって血が滴る。
「どうせ下っ端の下っ端がやってる店だし偽物しか置いてないから良いんだけどさぁ」
「命じて下さい。私共が虫退治します」
「いや構わないよ。女帝を手に入れる時に退治する」
ぺろりと滴る血を舐めると薄い唇が狂気じみた弧を描く。そして机の端に置いてあった書類を手に取る。
「どんなカラクリかは知らないけど彼女は退化した。あろう事かそんな彼女を匿ってるのは蜘蛛だ。恐らく奴等は彼女が人魚である事、女帝である事は知らないのだろう」
店を荒らしまわってるのは人魚の一部が欲しいだけでは無い。きっと彼女が探してるから手伝っているのだ、と続けると秘書は怪訝な顔をする。
「僕を、ね」
※※※
「うーん…」
「どーしたシャルナーク」
「今日の仕事なんだけどさ…」
珍しく顰めっ面でパソコンに向き合うシャルナークにクロロが声をかける。
「大方潰しちゃってるから、もう殆ど無いんだよ。後は雪国か南国なんだけど、どっちも最北端と最南端くらいだから飛行船乗り継いでも此処から五日はかかるんだよね」
「賞金首リストとかねぇのかよ」
「「賞金首リスト?」」