第6章 ニンギョ×ノ×キキ
「や…てっ!」
-ガシャン-
と激しく鎖の音を立てて精一杯の抵抗をする。
「欲しいなぁ…ねぇ教えてよ。君の…君達の女帝はどんな子なの?」
「死ん…でも教え、るかっ!」
「まぁ君ならそう言うと思ったよ。でも僕はもう知ってる」
「!?」
「チェリー=シャネル」
翡翠色の瞳が大きく見開かれる。
「そう、君の大事な大事な妹分さ。何で知ってるかって?そりゃ捕らえてる人魚は君だけじゃないもの。皆吐かずに死んでいったけど僕の念能力だと情報を読み取るくらい容易い…けど下級な人魚ばかりだったからその姿までは知らないんだ」
「下衆め…!」
「君が最後だ。ほら、君達が崇拝する女帝の姿、僕に教えて?」
ちゅ、とその白い首筋に口付けを落とすと一体化するように溶けていく。
「あ…あぁぁ………やめ、て…入って来ないで…」
「へぇ、藤色の髪………ルビーの瞳…いいねぇ最高だ」
すっと離れると女は痙攣する。
「ん?待てよ…確か現場で会った子供もそんな感じ…あの子供が人魚なのは一目見た時に分かったけど…子供の人魚は階級も無いし陸に上がれないハズなんだよな…」
痙攣する女を横目で見ながら首を捻る。
「マーミィの思い出の女帝はせいぜい12~14歲。4、5年は会って無さそうだから16~19歳。メモリーフレグランスでもそれは一致する」
「はあっ…はぁ」
「そう言えば何か飲んだ瞬間、力が膨大して………副作用で退化…若返りの薬があるともされてるから無きにしも非ず」
「ん…」
「少し探る必要が有りそうだな」
※※※
ずずっ…とグラスに入ったりんごジュースをストローで啜る。
丘を下った町の小さなカフェ。時間帯のせいか人気も少なくとても静か。広めの4~6人がけの席の窓側からパクノダ、チェリー、フェイタン。向かい側にウヴォーギン、ノブナガ。補助椅子を持ってきて窓の向かいにシャルナーク。
小さな手でグラスを持ってストローを咥えたまま俯いている。
「あの感じの悪い男と知り合いか?」
『多分…違う』
「でも何かを取られたんだろ?返してって…」
『うん…匂いがしたの』
一同「匂い?」
ぷらぷらと動かしていた脚を止めて上を向く。
『マーミィ姉の…匂い』