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泡沫人魚【狩人】

第1章 ニンギョ×ノ×ウワサ


「本物の人魚の眼球」

『…そう』



彼の念能力で本物の人魚の眼球を宝石化されたとしている。死してもその能力が解けない事からとても厳しい誓約をしたのだろう。



『どちらも死人の作品だけど強い念が込められてる…簡単には手に入れられないと思うけどな』

「必ず手に入れる」

『…そ。まぁ貴方達ならそのうち目を付けると思っていたけど』



ソファ椅子に全体重を預けたまま左手だけ伸ばしてカウンターのパソコンをカタカタとリズム良く叩く。



『もう何人かはウチに来て情報を買っていったけど…』

一同「!」

『誰一人として成功してない』



深く被ったフードからは表情は伺えない。だが、薄いヴェールから微かに見える血色の良い唇は僅かに弧を描いていた。



『まぁ貴方達は別物か………絵画も彫刻もそれぞれ別のところに保管されてあるけど…両方?』

「勿論だ」

『そ。じゃあこれ、見取図』



手際よくコピー機で印刷すると一枚一枚カウンターに並べて、それを一同が取り囲む。



『いつ襲撃予定?曜日によって警備員の配置とセキュリティが違うんだけど』

「チェリー、お前の最善は?」



チェリーと呼ばれた妖しげな女性は煙管を吸うと深く煙を吐き出して卓上カレンダーを指差す。



『恐らく管理会社は同じ。二箇所同時襲撃が混乱を招きやすくてイイと思う。この場所を中心に考えて絵画が保管されてるワイハー美術館は北西に794㎞、彫刻が保管されてるネチア美術館は南西に1156㎞…飛行船を乗り継いで最短で三日後』

「じゃあそれで行こう。報酬は…」

『いつも通り成功した後の後払いで構わない。お得意様だからね』





※※※





手渡された書類に目を通しながら道を歩く集団。歩く、と言うよりは建物と建物を飛び渡っていると言う方が正しいかもしれない。



「あの人が馴染みの情報屋?」

「そっか、シズクはまだ入ってばかりだから知らないんだったね」

「表向きはあんな感じで豪腕な武器職人だけど本職は情報屋。信憑性は一番だと思うな」

「そうなの?あんなに妖しいのに?」

「確かに。付き合いは長いけど誰も素顔見た事無いし」



カラカラと笑う青年は楽しそうに説明を続ける。
武器職人としての腕は確かで鍛冶を頼めば滅多な事が無い限り作られた武器が崩壊する事は無い。
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