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泡沫人魚【狩人】

第1章 ニンギョ×ノ×ウワサ


この世には人間や動物、昆虫など世間一般が目にする生き物がありふれている。だが勿論生き物はそれだけではない。近年、特に話題になっているのは人魚。
誰がそんな事を言ったのか、人魚の涙は媚薬になると言われ人魚の血を飲めば細胞が活性化して治癒能力を高めると言われている。人魚の鱗は身に持てば御守り。煎じて飲めば万能薬。
そして人魚の心臓を食せば全てが永遠になると言われている。










※※※



ギィ…と古びた木製の扉を開けるとチリンと小さく鈴の音が響く。古びた外観とは反して内装は小綺麗にされていて壁に掛けられた様々な種類の武器、硝子ケースの棚に並ぶのは値札の貼られてない武器。人の気配は無い。



「居ねぇな…留守か?」

「いつもの事よ。きと奥で寝てる」

『寝てませんけど』

一同「!?」



ふと硝子棚の後から声がかけられる。凛としたその声主は、のろりと頭を出してネジとドライバーを持ったまま立ち上がる。
肘が隠れるくらいまでの短いローブ。大きいフード。口元を隠すヴェール。素顔は分からない。ただ、声とローブの割れ目から見えるサラシが押さえ付けてる深い谷間、綺麗に括れたウエストラインを見れば女性だと言うのは言わずとも分かる。



「相変わらず妖しい格好してんなー」

『はいはい、そりゃどーも』

「修理でもしてたのか?」

『まぁそんなとこ。で、今日はお揃いで何の用事?』



机の上にネジとドライバーを置くと、ドカッと男らしくカウンターのソファ椅子に腰をかける。



『武器のメンテナンス?盗品の鑑定?…だとしたら皆で押し掛けて来ないよね。となると…何かの情報が欲しいのかしら?』

「話が早くて助かる」



髪の毛をオールバックにした男性がカウンター越しに紙を差し出して妖しげな女性がそれを受け取る。





※※※





絵画、人魚の祈りと人魚の恋。これらを描いたとされるイェガー氏は一年前に他界。彼は人魚を見た事があると言われていた唯一の人物で犯行は恐らく強盗の仕業。彼が描いた人魚関係の絵画は全て焼き尽くされ、残ったのは出展されていたこの人魚の祈りと人魚の恋のみ。
そして人魚の彫刻…通称、人魚の瞳。これはコカレロ氏の最初で最後の作品で出展直後に殺害されたのが半年前。彼は実際に人魚を殺めたとされており、彫刻の中心の大きな宝石は…
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