第1章 ニンギョ×ノ×ウワサ
情報屋としての腕も彼等が利用する中では一番の信頼があり、どんな情報も確実なものを提供する。他には鑑定士としての目利きも確かで、お店が襲撃にあった時も、いとも容易く片付けてしまう戦闘力も一級品。
「所謂万事屋、って感じかな」
「へぇ…」
「恥ずかしがり屋なのか、なかなか素顔を見せてくれないんだけどね」
「あら?そんな事無いわよ」
一同「!?」
グラマラスな女性が会話に割って入ると全員が驚いた表情をする。
「ね、マチ」
「うん」
「その話、俺も知らないんだが」
「え、待って…どうゆう事!?マチとパクは見た事あるの!?」
「「秘密」」
※※※
ギィ…と扉の開く音がしてソファから身体を起こせば、チリンと扉にぶら下がった鈴が鳴る。
『今日はお客様が多いな』
気怠そうにソファから立ち上がろうとすればカウンターに身を乗り出して頬杖を付きながら、こちらを見下ろす影が一つ。
「今日は繁盛してるんだ?」
『いつも繁盛してますが?』
漆黒の長髪。漆黒の猫目。纏う雰囲気は先程の集団と似て血腥い。
「情報、売ってくれる?」
『何の?』
「人魚の絵画と彫刻…『貴方もか』…が置いてある美術館の管理会社」
『………』
早とちりに羞恥を覚えたのか、見えない素顔を更に背けてパソコンに向き直る。
「彼等、来て情報買って行ったでしょ?」
『つい最近ね』
「管理会社潰すの頼まれたんだ。たまたま近くに居たから助かったよ」
『そう…はい、どうぞ』
先程と同じ様に手際良く印刷すると資料を目の前の男に手渡す。受け取った男はパラパラと素早く目を通して懐に仕舞う。
『………』
「………」
『………まだ何か?』
「いつになったら素顔見せてくれるのかなーって」
『出て行きな』
凛とした低く響く声。纏うオーラは凍てつき店の中が極寒と化す。
「ちぇーっ、冗談だって。照れ屋さんだなぁ」
『煩い、帰れ』
「はいはい」
-パタン…-
『アタシだってこんな暑苦しい格好嫌だっての』
その呟きは誰に届く事も無く宙に溶ける。
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