第3章 ニンギョ×ノ×ココロ
『………?』
天井を見上げてる筈なのに何故見知った人物が見えるのだろうと、数回瞬きを繰り返す。
「とても集中してたね。隙だらけよ」
『な、え、はぁ!?』
そして背もたれの無い椅子から盛大に転げ落ちる、かと思いきや背中に痛みは来ない。
『ローブ!ヘルメット!無い!!!』
「まだ隠そう、するか」
『だって…じゃなくて!受け止めてくれるのは有難いんですけど脚って行儀悪くないですかね?』
「受け止めてやただけ感謝するよ」
『………どーも』
しなやかな腹筋を使って上体を起こすと椅子から立ち上がって棚から擂鉢を取ってくる。
(昨日擂てた粉…)
『ところでさ』
「何か」
『不法侵入って言葉ご存知?』
「ワタシ達盗賊。そんな言葉知らないよ」
『………』
※※※
粉を振り撒いてトンカチを打ち付ける。反対側も同じ様に繰り返していく。白い体や綺麗な肌は煤と汗で汚れ、トンカチを持つ手にはマメが出来てるのが分かる。
「その粉」
『あぁこれ?コレが強度を上げる魔法の粉』
「何で出来てるか」
『それは企業機密』
「秘密ばかりつまらないよ」
拗ねる様な声色にクスリと笑う。
「何笑てるか」
『別にっ…と!』
-カァン-
『よし、完成』
「予定より早かたな。後一日あるよ」
『アタシが本気を出せばこんなもんよ』
ふふん、と得意気に言うと椅子から立ち上がって軽くストレッチをする。
『後は冷まして研いだら完璧。明日の早朝には終わってるわ』
※※※
「ヤベェな…このジャポンの酒マジうめぇ」
と酒盛り真っ最中のこの男、フィンクス。結構飲んでしまったみたいだが特に顔色は変わらない。次はこっちを飲んでみるかと手を伸ばしたら地下への階段から話し声と足音が聞こえてくる。
「お」
「ささとその汚れどうにかするよ」
『言われなくても分かってるしー』
-カツン…-
「お、戻ったか………って誰その別嬪」
「べぴん?この泥まみれが?」
『煩い!ってあぁぁああ!!!フィンクス酷い!アタシのお酒勝手に飲んでる!!!』
「え?だから誰?」
誰?と指差されたチェリーは暫く考えた後、自分の顔をペタペタの触って何かを確認する。