第3章 ニンギョ×ノ×ココロ
「うっせ!何でそーなるんだよ!」
フィンクスの怒声を背に聞きながらズカズカとお構い無しに店内に入る。荒れたりなど特に変わった様子は無いが人の気配はしない。
カウンターを飛び越えて奥の部屋に行けば小さな給湯室。
「お!この冷蔵庫、酒だらけじゃねぇか!何々…テキーラ、ウィスキー…ジャポンの酒!?何だこれ美味そう」
嬉々とするフィンクスを無視してフェイタンは横にある階段を登って行く。必要最低限の物しか置いてないシンプルな部屋。くらくらする様な女の子特有の甘い香り。
ふとベットの枕元の壁に貼られている絵に目が止まる。
「人魚の…絵…」
盗品である絵画ほど上手くは無いがそれなりに上手でかなりリアリティがある。描かれてる人魚は四人。若草色、空色、黄金色の髪をした人魚達はまだ子供、に見える。亜麻色の髪、翡翠色の瞳をした人魚は唯一の大人、と言う感じだ。
そっと触れようとした瞬間、下から声がかかる。
「おーい、フェイ!ちょっと来てみろよ!」
「………チ」
※※※
「何ね、ワタシ忙しいよ」
「これ見てみろよ」
ちょいちょいと指差す先は階段裏の床。ただの床では無く、そこだけ鋼鉄製。把っ手を持ち上げると意外と、と言うよりかなり重く普通の女性が持ち上げられる様なものでは無かった。
「地下への階段か…」
「行てくる」
「ちょ、またかよ!」
そんな言葉もお構い無しに地下への階段を降る。
「この酒飲んで………いっか!チェリーなら許してくれる」
※※※
カツンカツンと靴音を鳴らしながら長くも無い地下への階段を降りると狭い一本の廊下。この廊下も長くは無くすぐ終わる。その先にはまた鋼鉄製の扉。その扉に触れてみると熱を持ってるのか少し熱い。耳を寄せると中から何かを打つ音が微かに聞こえる。
-ギギギ…-
とこれまた相当重たい扉を開けると、むわっとした熱気が身体に絡み付く。部屋の中央には人影が一つ。こちらに気付く事無く、ただひたすらにトンカチを打ち続ける。
(音沙汰無いわけよ)
結い上げられた髪の毛の後れ毛は汗で濡れていて妙に色っぽい。
-カンッ-
『んーっ、いい感じ!後は仕上げかなー』
猫の様に身体を伸ばしてそのまま天井を見上げる。
「………」