第6章 もう1人
颯太side
「先生さようならー。」
「さようなら。気をつけて帰れよ。」
「はーい。」
生徒も帰り、教室には宏と伊藤だけが残っていた。
そろそろ帰らせないとな。
「お前らもそろそろ・・・」
「うん。帰る。」
「伊藤は話があるって言ってたな。」
「はい。出来れば人が来ない所がいいです。」
この時間だと、教師もほとんど学校にいないだろうし、俺が見回り担当だから誰もいないはずだ。
本人が希望するなら生徒指導室かな。
「分かった。」
「・・・じゃあ。」
最近、宏の様子が変だな。
元々クールな感じだったけど、暗い。
元気が無い。
「伊藤、ちょっと待っててくれ。」
「・・・はい。」
走って宏を追いかける。
「宏!待て!」
「なに?」
「お前、何かあったのか?」
「・・・何もないよ。じゃあね。」
「待てって!」
宏の腕を掴み向かい合う。
「だから何?」
少し怒ったように聞いてくる。
「何も無い事ないだろ。元気ないぞ?悩みがあるなら・・・」
「だから何もないって。」
「・・・俺の事避けてないか?」
「・・・。」
「俺たち・・・恋人同士じゃないのか?」
「・・・そうだよ。」
「じゃあ、隠し事すんなよ。俺何か嫌なことしたか?」
宏は何も言わなくなった。
俺、知らないうちに宏を傷つけていたのか?
「宏、ごめんな。」
「っ!どうして颯太が・・・颯太は何も悪くない。・・・心配かけてごめん。」
さっきとは違って悲しそうな表情をする。
「少し、不安になってただけ。颯太が俺から離れちゃうんじゃないかって。」
「宏・・・そんなことない。ずっと一緒にいるから。」
宏を抱き締め、額にキスをする。
「いいの?ここ学校。いつもはこんな事しないでしょ。」
「今日は特別////」
「・・・ありがとう、少し元気出たかも。」
宏の表情は明るくなった。
良かった。
宏を不安にさせるのも俺が悪いんだよな。
「颯太。もし、颯太が俺を選ばなかったとしても、一緒に居てくれる?」
「もちろんだ。・・・ほら、もう帰れ。また月曜な。」
「うん。」
・・・可愛い奴だ。
さてと、伊藤が待ってるな。