第8章 大切な人だから
颯太side
『今から帰る』
晃にメールを送り、塾を出た。
ここから歩いて30分ほどで家に着く。
外はすっかり暗くなって道を照らすのは街灯の明かりだけだ。
公園の横を通った時、公衆トイレが騒がしいのがわかった。
ふと見ると、うちの生徒が男達に絡まれていた。
「おい!何やってんだ?」
「せんせ・・・っ!」
生徒は半泣き状態だ。
「先生?コイツの教師かよ。」
「俺たち今楽しんでるんで。なぁ?」
「え・・・それは・・・」
完全に嫌がってるだろ。
俺はそいつらに近づく。
「これ以上俺の生徒を虐めないでくれ。行くぞ。」
「あ、先生・・・でも・・・」
「いいから。」
「ちょっと待てよ、先生。」
そう言って肩を掴まれる。
かなり力が強い。
「なんだ?」
「そいつはもういいや。あんた代わりに残れよ。気に入った。」
「っ!駄目です!先生!」
「わかった。・・・お前はもう帰れ。」
「で、でも・・・」
「はやく。親が心配するぞ。」
生徒を無理矢理帰らせ俺だけが残った。
俺は周りを3人の男に囲まれていた。
「あーあ、せっかく可愛い子見つけたのにさ。」
「先生?代わりに俺たちを楽しませてくれよ。」
「は?お前正気かよ。」
「けどまぁ・・・綺麗な顔してるよな・・・イケねぇことはないかも。」
何となく予想はしてた。
きっとコイツらはこうやって女の人を捕まえて犯してるんだ。
この暗さ、この場所なら人もそうそう通らない。
今までこいつらを見かけなかったのもバレないように場所を変えてるんだろう。
男達は俺に迫ってくる。
「へぇ、全然怖がってねぇのな。もしかして慣れてるとか?」
「まじかよ(笑)」
まぁ、初めから上手くいかせる気はねぇけど。
俺だって、鍛えてたんだ。
生きていくために戦い方だって特訓した。
それも結構昔になってしまうけど・・・
体はちゃんと覚えてる。
俺は近づいて来た男たちの手を取り身体を投げた。
さすがに俺の方が小さいから少し力が足りない気がしたが・・・
大丈夫だ。
ちゃんと投げれた・・・
こいつらも少しビビってる・・・
このまま行けば・・・
けど、俺は甘く見すぎていたかもしれない。