第8章 大切な人だから
颯太side
「颯太!」
職員室に戻る途中、宏が走って呼び止めてきた。
「宏、どうした・・・!」
いきなり抱きついてきた。
力が強くて剥がせない。
「ひ、宏!?ちょ、離れろ!////」
後ろで晃も見てるっ・・・!
「いやだ・・・離れたくない・・・やっと会えたのに・・・」
泣いてる?
胸元が生暖かい。
珍しいな・・・
「宏、ごめん。けどいつか別れは来るだろ?それが少し早まっただけ・・・」
「そうだけど・・・早すぎる。俺まだ颯太としたい事いっぱいある。」
「・・・宏・・・」
「颯太の授業だってまだ受けたかった。お願い、他の先生の授業も真面目に聞くから。どこにも行かないでくれ。ずっとこの学校に・・・」
「それは出来ない。それにもう辞任したし。仕事も決まってる。」
宏の俺を抱く腕がさらに強まる。
「海堂先生とはどうなるんだ?次の仕事って何?」
「一緒に住むことになった。塾講師をするよ。」
「じゃあ、俺、その塾に通う。」
急に顔を上げ、涙を流した目は腫れている。
「そしたらまた颯太に会える。」
「お前通う必要無いだろ・・・別に連絡は取れるんだからいつでも会えるよ。」
「いいのか?」
「何言ってんだ。当たり前だろ。」
その瞬間、宏は嬉しそうな目をした。
「よかった。」
俺は宏と同じくらいの強さで抱きしめ返した。
優しく背中を擦り、落ち着かせる。
「俺、そろそろ戻らねぇと。お前も新しいクラスだろ?早く戻れ。」
「うん。また後で。」
「おう。」
何となく宏も止めに来るだろうとは予想してたけど、ここまでとは。
少し不安だな。
ん?
何か背中に感じる。
「颯太さん・・・恋人の前で他の男と会う約束するなんて・・・」
「お、おい!落ち着けって!ただの教え子だろ!?」
「それでも嫌です!・・・帰ったら覚えといてくださいね。」
「ひっ・・・」
怖い・・・