第8章 大切な人だから
颯太side
『晃、もうやめろ。』
これは、過去の記憶?
俺も晃も制服を着ている。
雪が降り続き、一面が真っ白な時期だった。
ちょうど受験を控えていた時期。
『駄目なんです。颯太さんを守れるようにならないと。またあの時みたいに。』
『もういい。俺はお前の身体が・・・』
『こんなのどうってことないです!』
っ!
この時、正直コイツに腹が立った。
こいつの為を思って止めたのに、止めなかった。
晃の力が無くたって自分の身くらい守れる。
それに、最近構ってもらえてなかった。
ずっと能力の向上に努め、デートの回数も手を繋ぐ回数も、会話の回数も。
それから目を合わせる回数も・・・全て無くなった。
俺らの付き合ってる意味が分からなくなっていた。
俺も受験で忙しく、ストレスも溜まっていた。
色んな事が頭の中でぐしゃぐしゃになって俺はつい・・・
『晃、別れよう。』
卒業の日にそれだけ告げ、晃の前から消えた。
何度も忘れようとした。
ふたりで撮った写真も、お揃いのネックレスも、思い出も全部捨てようと思った。
けど出来なかった。
まだ、好きだったんだ。
どこかでまた会えないか期待してた。
会えたらその時は謝ろう。
また寄りを戻そうと決心していた。
けど、実際会ってみると全て頭の中から消えてしまった。
謝罪の言葉も言えなかった。
久しぶりに会った晃は大人になっていて前よりカッコよくなっていた。
それでも、俺の中ではあの頃の晃の姿で止まっていた。
心の整理もできなかった。
「寄りを戻したい」
そう言われた時は嬉しかった。
俺もすぐに応えを出すつもりでいた。
俺は・・・
今の晃を好きになれる自信が無かった。
俺が好きになったのはあの頃の晃だ。
勿論、外見も性格も変わらなかった。
それでも、またコイツを好きになるのが怖かった。
「・・・ごめん。」
いつの間にか言葉が口から零れていた。