第8章 大切な人だから
晃side
颯太さんは1日経っても目が覚めなかった。
寧ろ悪くなっているようだ。
「颯太さん・・・声聞きたいです。」
なんて言ってもきっと聞こえてない。
俺は一睡も出来なかった。
ずっと手を握って颯太さんを温めていた。
少しでも冷えると不安になる。
「失礼します。」
病室の扉が開き、伊藤が入ってきた。
表情は暗くてよく見えない。
「伊藤・・・体はもう大丈夫なのか?」
「・・・どうして・・・助けたんですか?」
「・・・颯太さんは・・・お前が死んだら悲しむよ。だから。それに、誰もお前が死ぬ事願ってない。」
「・・・颯太先生・・・もう起きないんですか?」
「分からない。もう願うしかないよ。」
伊藤は声が震えていた。
拳を握りしめ、俺の向かいに立っていた。
「海堂先生・・・すみませんでした。・・・僕・・・最低な事を・・・」
「もう終わった事だ。気にするな。ただ、無闇に能力を使うなよ?また颯太さんが心配する。」
「はい・・・」
皆焦っていたんだ。
好きな人が取られる、殺されるって必死になっていただけ。
過去の俺もそうだった。
愛する人を、大事な人を守らなきゃって必死になっていた。
結果、颯太さんを傷つけていた。
恋心は時に人を壊す。
楽しいだけじゃない。
怖いものでもある。
そう実感した。
「海堂先生。僕、颯太さんにかけていた能力を解除してみます。」
「出来るのか・・・?」
「分かりません。まだやった事なくて。ただ、呪いがかかったのと同じように解けるんじゃないかって思ったんです。」
「伊藤・・・頼む。」
「分かりました。やってみます。これが・・・僕が出来る償いです。」
伊藤が颯太さんの頭にそっと手を添え瞳を光らせた。