第8章 大切な人だから
晃side
「伊藤が死ねば・・・颯太は・・・」
「ひろ・・・俺は・・・もういいから・・・」
「いいわけない!颯太が・・・好きだから・・・幸せになって・・・欲しい・・・」
颯太さんが飯塚に這いつくばって近づく。
俺は何も出来ない。
どうしたらいいか分からない。
俺の能力はここにいる全員を殺しかねない。
「馬鹿かよ・・・そんなことしたら・・・俺・・・お前に会えなくなるだろ・・・それにまた叱れない・・・」
「確かに・・・さっき俺が言ってた事矛盾してるな・・・けど・・・忘れられて見守るより・・・死んでも颯太の記憶の中に入れる方が・・・俺は幸せだ・・・」
颯太さんの手が飯塚に近づく。
「ひろ・・・そんなんじゃ・・・おれ・・・幸せになれない・・・お前がいないなんて・・・」
飯塚の頬に手が触れる。
「こうやって・・・もう触れることが・・・出来ないなんて・・・頼む・・・もう解いてくれ・・・」
颯太さんは涙を流すが、きっとそれも飯塚には見えてない。
ただ、頬から伝わる颯太の熱を感じて飯塚も涙を流していた。
今唯一動けるのは俺だけ・・・
飯塚を眠らせるしかないか。
飯塚に向かって歩み寄る。
「飯塚、すまない。」
意識を飛ばそうと腹を思いっ切り殴ろうとした時、飯塚の首にペンダントがかけられる。
これどこかで見た事が・・・
「何事かと思って追いかけてみれば・・・」
「生きる死ぬとかの問題より先にスピード違反で捕まえるぞ。」
顔を上げて見ると、立っていたのは樹輝先輩と将輝先輩だった。
「いっくん・・・将輝くん・・・どうして・・・」
「たまたま樹輝といたんだよ。そしたら猛スピードで走ってく海堂の車が見えたから追いかけてきたんだ。」
ペンダントの力で飯塚の能力が解け、瞳に光が戻る。
颯太さんもそれに安心して飯塚に抱きつく。
「よかった・・・」
「颯太・・・?どうして能力が・・・発動しない?」
「このペンダントは元々俺の力を抑えるために作られたやつだ。」
「本当に・・・よかっ・・・」
颯太さんはその場で気を失った。
「颯太さん!?」
「颯太!?・・・余計な事すんな!こんな物・・・っ!」
「大人しくしてろ。」
将輝先輩が飯塚の腹を軽く殴り、気を失わせた。
「さて・・・どうする?樹輝。」
「とりあえず・・・海堂、説明してくれ。」