第1章 出会い
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この人気のない港でこの黒服サングラスと云ったら、あの組織しかないじゃないか。
『ポートマフィア……』
此処ら一帯、というかこの横浜は彼らの縄張りだ。
よく取引をする場所があるとは聞いていたが、真逆自分が出くわすだなんて思ってもみなかった。
何故此処を通ろうと思ったのか、数分前の自分を殴りたい。
我ながら本当に莫迦だと思う。
「……いや待て。此奴、結構な美人じゃねぇか」
「そうだな…楽しんでからでも良いかもな」
じり、と男達が近付いて来る。
先刻とは打って変わって、下品な笑みを浮かべる男達に鳥肌が立つ。
彼等の会話からもう私の運命は判っている。
まだやりたい事が沢山あるのに。
運命の人とも出会ってないのに。
こんな処で、こんな事で、私の人生は終わるのか。
助けを呼ぼうにも恐怖で声が出ないし、第一こんな処で叫んで人が来るのかも怪しい。
もう……駄目なのか。
『………!』
伸びて来る手に、ぎゅっと潤む瞳を閉じた。
その時だった。
「─────オイ、何してんだ手前等」
救世主の声が響いたのは。
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