第1章 出会い
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聞こえてきたのは、酷く不機嫌そうな声だった。
耳にしただけでビクッと肩が揺れるのが判る。
「はァ?何か用────」
迫っていた男が舌打ちをして後ろを振り返る。
謎の声の主を捉えたらしいその男の言葉は不自然に途切れ、何故か動きが止まった。
そしてつられて振り返ったもう一人の男も、同じ様に固まる。
「────へぇ?良い度胸だな」
また聞こえた声。
それは先刻の不機嫌そうなのとは打って変わって、愉快そうに嘲笑うかの様だった。
「…ッ、な、何故、貴方が此処に……!?」
「糞!もうバレたのか……!」
目に見えて焦り出す男達。
私はというと、未だ状況が掴めずに固まったままだ。
考えてもみて欲しい。
いきなりポートマフィアとエンカウントして、殺されるかと思いきや襲われそうになって、そしたら突然救世主が現れて、男達が慌て出したらそりゃ戸惑う所か固まるだろう。
ていうか、救世主様は一体何者なんだ?
なんて首を傾げた直後。
ドゴッ!!
鈍い音と共に、目の前にいた男二人が思い切り横に吹っ飛ばされた。
余りにも突然で、しかも一瞬だった。
声も出ず、ただ目を見開く事しかできない私の目の前に軽い動作で着地する人物。
細い身体、揺れる癖のある髪の毛、黒い外套、黒い帽子。
押さえた帽子の下で開いた瞳は、美しい青だった。
「済まねェ、うちの者が迷惑かけたな」
ぽかん、としている私に救世主は謝罪の言葉を述べる。
『か……っ』
「か?」
『…かっこ、いい…………』
気付けば私は、そんな事を口走っていた。
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