第2章 【Dtm】Baby
「そのヴィランの個性、どうも触れていた時間が長ければその分戻る時間も遅くなるらしい。さんが戻るのは一日かからない程度だそうだ」
「そうですか……」
「まあどんなに長くても三日が限度らしいから安心して。こちらからさんの親御さんに連絡するよ」
警官は電話をかけに席を立った。
俺の膝の上に座るはまるで羊だ。服の代わりに綿を纏っている。しかし暑いのかいつの間にか顔だけじゃなく、手足の綿もどっかに消えていた。綿があるとはいえ早いとこ服をどうにかしなきゃなと内心焦る。は大人しく室内を見渡していた。
「とろろきくん!あれ、と、とろろきく、ととろき、ととろ……」
ちゃんと言えない、とまた目に涙を浮かべる。──なんだ、これ。胸の辺りがぎゅんとする。病気か?
いよいよ嗚咽を上げ始めたため、そのままでいいと頭を撫でてやると嬉しそうに笑った。笑った顔はいつものと変わらないな。
「あ、轟君。さんのお母さんが君と話したいそうだ」
戻ってきた警官に呼ばれ、を下ろして席を立とうとしたが腹にしがみつかれ身動きが取れない。仕方なく片腕に抱いて立ち上がった。
棚に置かれた白い受話器を取り挨拶をすると明るい声が耳に響く。
『轟くん?いつもがお世話になってます。ご迷惑おかけしてごめんなさい。それでね、私仕事抜けられそうになくて……もしよかったら家でを見てて貰えないかしら』
「でも──」
『家はわかるわよね。鍵はあの子いつも鞄にいれてるから見てみて。夕方には帰れるんだけど……どう?』
「……わかりました。もし何かあったら連絡します」
『ありがとう!本当に助かるわ!』
あまりに必死な母に負け、携帯と会社の番号を貰い俺は小さいとの家に向かうことになった。家までは警官が送ってくれると言うので甘えさせて貰った。
はというと俺に抱かれながら楽しそうに人の髪を弄って遊んでいる。
「とろろきくんの髪、きれいねえ」
以前、が俺に言った言葉を思い出してやっぱり変わらないなと思った。ところで、心臓が苦しいんだが。これ本当なんなんだ。