第2章 【Dtm】Baby
蝉の声と照りつける太陽にアイツを思い出して嫌な気持ちになる。はもう着いているだろうか。待ち合わせに指定された駅に近づくと駅前の通りに何やら人集りが出来ていた。パトカーに警察、ヒーロー達もいる。ヴィランが現れたのか?人集りから一歩下がったところで携帯を確認するが、連絡は来ていない。まだ着いていないのかと辺りを見渡した、その時だった。
「とろろきぐんっ!!!」
「うお、」
人集りを突き抜け足元に激突してきた毛玉。もふもふした毛玉はべそをかきながら、隠れるように俺の背後に回り込んだ。
──なんだこれ。ヴィランか?
「君、この子の知り合いかい?実はさっき退化の個性を持ったヴィランが女性を襲おうとしてね、この子が女性を庇って……子供になってしまったんだ」
警官によると身元を確認しようにも泣いてしまって手が付けられないらしい。俺は嫌な予感がして脚にへばりつく毛玉に目をやる。恐る恐る屈んで、この予感が外れることを願った。
「お前、か?」
「でしょ!とろろきくんわすれないで」
柔らかな毛玉がふわりと剥がれる。露わになった顔は、幼くしたそのものだった。ああ……項垂れて愕然とする。こいつはいつもそうだ。また飛び出したのだと容易に想像出来た。
「とりあえず、君もこの子と一緒に署まで来てくれるかな?詳しい事はそこで話そう」
相槌を打って一向に離れようとしない毛玉──もとい小さいを連れパトカーに乗り込んだ。鞄に入った教科書がやけに重く感じた。