第4章 【Dtm】Charm
「少なくとも今の俺はお前のそういうところがいいと思って一緒にいる」
償いのつもりで始まった関係。だが、その関係もいつしか大きく変化していた。
いや。変化したのは俺の感情だろう。
一緒にいて安らげる存在。そんなとの時間を求めてしまっている。
──それだけじゃない。
の傍にいたい。笑顔が見たい。触れたい。抱き締めたい。同じ時を過ごすほどにとめどなく溢れる欲。
勘のいいはそれに気がついているだろうか。
隣の彼女の表情を窺う。赤い頬。光を弾きながら惑い揺れる瞳。小さな声で礼を言うのが聞こえた。
頭をひと撫ですると柔らかい髪が指を擽る。心地よい指通りにもう少し触れていたい気になるが緩やかに手を下ろして歩を進めた。
は「撫でるの癖なの?」と問いながら困ったように微笑む。その問いに「そうかもしれねぇ」とだけ返した。
肌も髪も、目も口も。
顔も声も体も。
をつくる全て。どれもが彼女の魅力だと思い直す。
更衣室で峰田がの事を何ていうつもりだったのか、俺には予想もつかない。だが、きっと俺の方がのことを語れるだろう。もしその時が来たら教えてやるか。
ゆっくりと会話を交わしながらスーパーに寄りの買い物に付き合った。一人の時より幾分もペースを落として歩いていたのに存外早くの家の前に到着した。
は目を細めて礼を述べる。ジャージと買い物のことだ。礼と謝罪をよくするのは習慣なのか、性格なのか。若しくはその両方かもしれない。
俺がいつものように気にすんなと言えば、は頷いて髪を揺らした。
「じゃ、また明日ね」
「ああ」
振り動く手を捕まえる。指を絡ませるように繋いでから、惜しみつつもするりと解いた。
「また明日」
僅かに口角が上がるのを感じた。こういう時、は何だか嬉しそうに笑う。
が無事帰宅するのを見届けて俺も帰路に着いた。
ああ、なんで肌が柔らかいのかって訊くのを忘れたな。家の門に触れた左手に別の感触が浮かび、頭を横に振って煩悩を振り払った。俺は、どうかしてるみてぇだ。
思考を上書きするように、また今度訊けばいいと思いながら家の門を潜った。