第1章 【Dtm】Feel
は何度もありがとうと言いながら、子供みたいに俺の手を上下に振り回す。普通に触ってる事に感心する。慣れるまで多少躊躇するのではと思っていたが、そんなことは無かった。
緩みきった表情で何か考え込むに小さく笑った。彼女にとって大きな前進だろう。力になれてよかった。
あわよくば、克服するまでそばに居たい。一歩ずつ前に進むを間近で見ていたいと思った。それは償いなんてもんじゃ無く、ただの俺の我儘だ。
は鼻歌を歌いながら箒で散らばった綿を集めている。よっぽど嬉しいんだな、と微笑む。
さすがに何もしないのもどうかと思い、やる事を探してみたが殺風景な教室だ。特に何も見つからない。
心地よい鼻歌が急に止み、どうしたのかとの顔を見やると頬を染めて俯いていた。ころころ変わる表情は見ていて飽きない。
は誤魔化すようにさっさとちりとりの中身をゴミ箱に捨てて掃除用具入れにしまった。
「さて、帰ろっか」
「あぁ。悪ぃ、何も手伝えなくて」
「轟くんは私の特訓手伝ってくれてるでしょう。それにアレ全部私が散らかしたモノだから、自分で片付けるよ」
「……そういうもんか」
「うん、そういうもんだよ」
半ば強引に掃除はの担当になった。
はあまりに綿の量が多い時は13号先生を召喚すると笑った。確かに手っ取り早そうだ。
以前廊下が綿まみれになった時も13号先生が個性を使って片付けていた。あんな事にならないのが一番だが、この特訓をしていく上で避けては通れないだろう。
手は触れても大丈夫だった。
それより上はまだ何とも言えない。
また、いずれ俺以外でも大丈夫なのか試さなくてはならないだろう。それには協力者が必要だ。
が気にかけている緑谷が妥当だろうか。
そう考えて、想像して──。
が他の奴に触られるのは嫌だと思った。