第1章 【Dtm】Feel
並んで歩いているとの手が俺の手にぶつかった。いつもはぶつからないよう意識して距離を保っていたが、今日は違う。俺もも自然と距離を詰めて歩いていた。
何度も手がぶつかるから、落ち着かなくて拳を握ったりの顔を覗いてみたりする。は相変わらず嬉しそうに微笑んでいた。
もういっその事、この手を繋いでしまいたいと思う。
「……なあに?」
「……」
「あっあの、もう少し離れて歩こうか?」
「別に、このままでいい」
「そう?そっか……」
は首を傾げて俺が何を思っているのか考え込んでいるようだった。もどかしいが離れるくらいならこの距離のままでいい。
手がぶつかる度に、繋ごうか悩んで、やっぱりやめる。特訓は終了したんだ。負担になるようなことはしたくなかった。
さっきまで触れてたの体温が指先に蘇った。ふと、指先を見ると俺よりも小さい手が人差し指と中指を緩やかに握っていた。
驚いた。隣を見ればはほんのり頬を染めて俺を見上げる。
「い、いいかな……?触れるの、嬉しくて」
頷くとは満足げに笑った。その足取りは普段より幾分も浮かれている。駅に着くまで、握られた指先はそのままで。
俺はほかほかした気持ちを胸にの隣をゆっくりと歩いた。
end.