第4章 【Dtm】Charm
左手に感じる脈に違和感を覚える。の心臓の動きが何故分かるのか。手を動かせば柔らかさが掌に広がる。
「やっ……とどろき、くん」
小さくも甘い声が間近で聞こえた。
の真っ赤な顔と涙の滲む瞳。
そこでようやく、しでかしてしまったことを理解した。慌てて手を下ろした。
「お、あ……わりぃ……」
胸を、触っちまった。まずいと思ったが、もこもこと生産される綿に遅かったと悟る。
は自身の体を抱きしめて綿を止めようとしているが、露出した肌から生まれた綿が俺との間の空間を埋める。
どうにかしないと車内が綿まみれだ。ヴィランだなんだとパニックになっても困る。
俺は鞄からジャージを取り出してに羽織らせた。前のファスナーをあげるとの制服も綿も全て隠れる。
これだけゆとりがあれば少しくらい綿で膨らんでも問題ないだろう。
「あ、ありがと……」
「悪ぃ……しんどいだろうが、これで少しは落ち着けるか」
は頷くとジャージの裾を握りしめて何度か深呼吸を繰り返した。俺もここでやっと一息ついた。
左手に柔らかい感触が蘇り、むず痒い感情が湧き上がる。やがてその感情を覆うように罪悪感が募った。
これじゃ特訓どころか余計なトラウマを増やしただけだろう。
俯いているとは俺のワイシャツの裾をつんと引き、小声でもう大丈夫だと言った。
「あの……わざとじゃないんだし気に病まないで」
は弱々しく微笑む。
「これ助かるよ。借りてるね。目立って恥ずかしいけど」
「制服だって目立つだろ」
「まぁ、そうなんだけどね。雄英生の宿命だ」
半袖のジャージだがには大きく肩の落ちた袖により腕の半分が隠れてしまっている。
いつも同じデザインのジャージを着ているのに、サイズが違うだけでこうも印象が変わるのかと驚く。
そんなの姿に心臓がぎゅっと鷲掴みにされるような感覚がした。