第4章 【Dtm】Charm
駅に着く頃にはもいつもの調子に戻っていて、変わらずよく笑っては俺を和ませていた。
は乗り込んだ電車の扉の前に立ち、窓の外を眺めている。揺れる車内で、ふと峰田の言葉が蘇った。
「」
「ん?なに?」
「壁ドンしていいか」
「え……したいの?」
は少し悩んでから俺を見上げて問う。正直なところどっちでもいい、つまりはそこまでしたいとは思わない。
だが、それでが喜んだり、俺にしか見せない表情をするならして損はないだろう。
「そういう訳じゃねぇが、しとけって言われた」
「誰に?」
「峰田」
「あー」
事の顛末を話すとは苦笑して「響香ちゃんに気をつけなって言われたなー」と呟いた。
何に気をつけるのかいまいち理解出来なかったが、話の流れからして壁ドンのことだろう。
そんなに嫌なもんが流行ってるなんて女子の世界は時々理解に苦しむ。
「轟くんがしたいなーと思ったら、どうぞ?でも突然は怖いから宣言してね。今から壁ドンするぞって」
「わかった。じゃ、今からするぞ」
「えっ待って、今……っ!?」
がストップをかけたから伸ばした手を下ろそうとした。しかし同時に電車が大きく揺れ思わずよろめく。咄嗟にを潰さないよう手をつくと小さな声が上がった。
ほかの乗客の声もちらほら聞こえる。座席に座っている人達も揺れで体勢を崩していた。
比較的安全な壁際にいながらもの片手は手すりを、もう一方は俺の服を掴んでいる。
電車は急停車し、車掌によるアナウンスが流れる。
踏切の非常停止ボタンが押されたとの事だった。安全が確認できるまで停止するらしい。
「びっくりした……ね」
は目をぱちくりさせて辺りを見渡す。幸い車内は満員という程ではなく、立っている人よりも座っている人の方が多い。怪我人などはいなさそうだ。
まだ落ち着かないのかの鼓動は速いままだった。