第4章 【Dtm】Charm
その日の帰り道。
雄英の生徒達が門を潜り下校する。俺達もその群れに混じり並んで歩いていた。
「今日のお夕飯何にしようかなぁ…轟くんリクエストある?」
「今の時季は鯵が旨いぞ」
「いいねーシンプルに開き焼きかな!鯵フライもいいな」
はぽんと手を叩いてそうしようと微笑む。楽しみだな、と思ったがすぐに俺の家の話じゃないと思い直した。
「聞かれたから答えたが、俺は食えねぇな」
「あ……そうだね!リクエストじゃないね。おすすめある?て聞けば良かった」
眉を下げて申し訳なさそうに笑った顔が可愛いと思う。
はどこか抜けてるところがある。考え込んでぼうっとしてる時は特に注意して見てやらないといけないような気がして、つい危険がないか確認してしまう。
実際は勘が良く咄嗟の反応速度も速い為、俺が心配することもないのだが。わかってはいてもほっとけないんだ。
が謝罪を口にする前に俺は口を開いた。
「俺も姉さんとよく買い物に行く。スーパーで鯵を勧めてみる」
「食べたくなった?」
「ああ。の作ったのが食いてぇが、我慢だな」
「私のよりお姉さんのがずっと美味しいと思うよ。経験が違うからねー」
あと十年は修行しなきゃとは笑う。別に味は何だっていい。が作った物を食べてみたいと思ったのだが。
「なら十年後、食わせてくれるか」
「ふふ、いいよ。それまで覚えてられる?」
「十年後も一緒にいる。そうしたら忘れねぇだろ」
家も近いしな。連絡取り合って会えばいい。
からの返事がなく、嫌なのかと顔を覗き込むと心無しか頬が赤く見えた。
「どうした」
「なんでもないです……」
「具合悪ぃのか」
「違います」
突き放すように言うなり顔を逸らした。髪の合間から覗いた耳はやはり赤い。触れようと手を伸ばしたらは勢いよく俺を振り返って首を横に振った。
「今触っちゃだめ」
「俺、気に触ること言ったか」
「違う、私が……変なの」
の腕から薄い綿が出ている。ガーゼのようなそれはやがてちぎれながら風に流れていった。