第4章 【Dtm】Charm
「はーわかってねえ!偶然を装ってやっちまうことに意味があんだよ」
「そうなのか」
偶然なら嬉しいのか?わかんねぇ。
「どうすればいいんだ?」
今後の為に詳しく聞いておこうと思ったが、飯田が俺と峰田の間に入った為それは叶わなかった。
「こら妙なこと吹き込むんじゃない。とにかく落ち着け、峰田くん」
「これが落ち着けるかー!」
緑谷も切島も止めようとするが、峰田の滾りように誰も手がつけられない。個性を使ってしまえば止めるのは容易だろう。
しかし、校内での個性使用は禁止されているし、こんな狭い場所で使うのは危険だ。
うっかり峰田の髪に触れたらくっついて離れなくなるのも迂闊に取り押さえられない要因だろう。
そうこうしてる内に峰田は壁穴に顔を近づけ、息を荒らげていた。女子の名を挙げては何か呟いている。
「の──っぎゃあああ!!」
峰田の眼球は壁穴の向こうからやって来た耳郎のイヤホンジャックに突き刺された。
何を言うつもりだったのか。悶絶する峰田の背中を見下ろすと、峰田があいつに触ったことがあるのを思い出した。四月の頭にあった騒動が脳裏を過る。
確かあの時、峰田はの脚を触っていた。
俺はまだあいつの脚に触れたことはない。恐らく、触れれば峰田と同じように拒絶されるだろう。
そんで謝って強がってまた無理しようとするんだ。のそんな姿が想像出来て口元を緩めた。
あいつの魅力は柔らかい肌だろうな、とぼんやりと考える。頬なんか大福か素甘みてぇだ。腕も筋肉はあるのに何故かふわふわしている。どこもかしこもつい触りたくなる滑らかな手触りだ。
男と女の違いか?それとも個性か、食生活か。
なにか特別なことをしているのだろうか。
そういや、前に個性の為に食事に気を使っていると聞いた気がする。何か秘訣があるのかもしれない。
赤いネクタイを締めて、立てた仮説に心の中で一つ頷いた。今日の帰りに聞いてみるか。
収束を迎えた峰田の暴走を背に、俺は一足先に更衣室を後にした。